普通に暑かった8月
ロンドン五輪も終わり,その後も38個のメダルの獲得者のテレビ出演率が上がって色んな後日談が聞けました。特に女子スポーツ選手の活躍が目立った大会
でした。その中でも,なでしこサッカー,3人娘の卓球,女子バレーボールは結構のめり込んで観ていましたので,なかなか感動的でありました。こういう状態
でしたから,柔道の不甲斐なさも目立った大会でした。柔道の試合の考え方を根本から変えないと(というかルール自体を変えないと),今後もなかなか勝てな
いような気がします。
お盆休みは13日から1週間頂きまして,家で読書三昧とひるがの高原に出かけて山間を抜ける高原のさわやかな風を楽しんできたりと,例年並みに暑かった
(といっても雨も降った)休みを過ごしました。祈りが通じたのか,岐阜市内では38℃になることはありませんでしたが,結構蒸していた気がします。読書で
はいろんなジャンルを多読しました。高野史緒の「カラマーゾフの妹」は有名な原典をモディファイするとこんな推理小説になるんだと,新しい小説の書き方を
知らされた気がします。しかし,原典は忘れて,関連性など考えずによむべきです。また,東野圭吾の「虚像の道化師ガリレオ7巻」も期待通りの面白さでし
た。あと,会津藩出身の新島八重に関する本を2冊読み,来年の大河ドラマがさらに楽しみになっています。科学系の新書では,大栗 博司の「重力とは何か」(幻冬舎新書)と 丸子 かおりの
「放射線測定のウソ」(マイナビ新書)。先日のヒッグス粒子(場)の存在証明の実験の報道もあって,今はとても素粒子物理学や宇宙物理学が面白い時代に
なっています。自分が今もし高校生だったら,間違いなく大学では理学部で素粒子を勉強したいと思っていたでしょう。いや,実はこのワクワクする気持は44
年前の高校2年だった自分の気持ちだったのですから,また蘇ったのかも知れません。高校2年の頃,光は粒子か波か,などの疑問に答えるために高校の図書館
に入り浸って本を漁っていたのを思い出しました。今高校生だったら,図書館に入ってヒッグス場とは何か,暗黒物質とは何かなどの疑問に答えるべく本を漁っ
ていることでしょう。こんなワクワクする時代にいる今の若者は羨ましく思います。
振り返って,今自分の専門にしている生命科学の分野ではワクワ
クする気持ちにさせてくれる本にはなかなか出会いません。そういう時代になったのかも知れません。自分が高校の時抱いていた物理をやるという気持ちを,大
学に入ってから読んだシュレディンガーの「生命とはなにか」のような本によってぐぐーっと生命科学の方に変えさせられてしまいましたが,そのようなインパ
クトのあるものは本当は異分野の人が書くべきなのかも知れません。
8月前半は前学期の成績を付ける仕事がありましたが,今回からすべて
AIMSを使ってやることになったので,あっという間に終わってしまいました。後半は,幾つかの入試業務があり慌ただしくしていましたが,30日で院入試
もほぼ終わり,卒研生の進路もこれでほぼ決定したので,あとは後学期に向けて走り出します。学生でまだ就職先が決まっていないものも修士にも学部にもまだ
いますので,後半の活動をあきらめずに,しっかりやってほしいと思います。残り物には福がある,ということもありますので。
9月初旬の学会での仕事を済ませると本当の夏の終わりになります。
そんな中,Nature誌の最近号に
「サルのカロリー制限は寿命を延ばさない」という大変面白い論文が載りました。ネズミと霊長類とは違うということと,実験条件の設定の難しさを認識させる
論文です。カロリー自体の問題ではなく,食事の内容が重要だという指摘は正にその通りで,糖尿病の治療の最近の動向にもつながる研究です。寿命とか病気と
かもともと複雑な現象をカロリーという一つの物理量に関連付けるところに無理があったのだと思います。昔の物理学徒としては,そう思います。素粒子だって複雑なんだから。。。
(2012.08.31)