正作用と副作用
臨時のメモです。
抗インフルエンザ薬のタミフルの副作用を巡って、再び議論が大きくなってきて、厚生労働省が方針を若干変えましたので、現場ではやはり色んな混乱が起こっているようです。シアリダーゼ阻害剤ということで、以前からその神経作用が気になっていた現象なので、この辺でコメントを一つ。
British Medical Journal誌に、去年の1月に以下のようなレビューが載っていました。
http://www.bmj.com/cgi/content/full/332/7535/196
少し日本語訳(抜粋)をしますと、以下のようなことが書かれています。
「・・・・ ノイラミニダーゼ阻害剤オセルタミビル(Tamiflu)とザナミビル(Relenza)は、強い流行性の、あるいは全国的規模の流行になった場合のインフルエンザには、効果的かもしれないが、感染症対策措置をしながら使われなければならないと、先週発表されたコクランレビューで述べられている。そこでは、これらの薬は季節性のインフルエンザには使ってはいけないのであって、強い流行性のインフルエンザのためにとっておかれなければならない、そして、他の抗ウイルス剤はインフルエンザのためには使ってはならない、と記されている。
・・・
そこではノイラミニダーゼ阻害剤は風邪症状を弱めて、季節性インフルエンザの伝染を中断することを示した。しかし、それらは無症候性の感染を防がなかった。
・・・
トム・ジェファーソンとコクラン・ワクチンフィールドのチームは次のような結論を下している — 「アマンタジンとリマンタジンの使用は、避けなければならない。ノイラミニダーゼ阻害剤は季節性インフルエンザには使ってはいけない。手を洗い他の人との接触を避けて、他の公衆衛生的処置と一緒に、強い流行性または世界的流行のときにのみ、ノイラミニダーゼ阻害剤の抗インフルエンザ薬は使われなければならない。」
たとえノイラミニダーゼ阻害剤は、ウィルスの拡散を減らしたとしても、完全に止めることはできないし、その薬で治療された人々はまだ伝染する可能性をもっており、ウイルスの拡散を避けるための処置をとらなければならない。」
これを読むと、日本でのタミフルの使い方は、かなり異常なのではないか(使われ過ぎ)、と思いますね。行動異常がでたから使い方を控えよう、ということより、それ以前の問題があるということです。タミフル耐性のインフルエンザウィルスを作り出す機会になっているんじゃないか、とも思えます、こんなに使われていると…。
また、神経症状と関連して、以下のような論文も出ているので、シアリダーゼ阻害剤の神経精神作用は研究の余地あり、でしょう。シアル酸を含む糖脂質の代謝に影響するだろう、というのは容易に想像できることですから。シアロ糖蛋白質への影響だって、考えられるし。この機会に、シアリダーゼ阻害剤の使用の制限をしっかりやって、しっかりと個人レベルのデータをとっていくのが重要なんじゃないだろうか、と思います。
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Brain Res. 2004 Jan 9; 995(2):260-6.
Neuraminidase inhibitor, oseltamivir blocks GM1 ganglioside-regulated
excitatory
opioid receptor-mediated hyperalgesia, enhances opioid analgesia and attenuates
tolerance in mice.
Crain SM, Shen KF.
The endogenous glycolipid GM1 ganglioside plays a critical role in nociceptive
neurons in regulating opioid receptor excitatory signaling demonstrated to
mediate "paradoxical" morphine hyperalgesia and to contribute to opioid
tolerance/dependence. Neuraminidase (sialidase) increases levels of GM1,
a
monosialoganglioside, in these neurons by enzymatic removal of sialic acid
from
abundant polysialylated gangliosides. In this study, acute treatment of mice
with the neuraminidase inhibitor, oseltamivir enhanced morphine analgesia.
Acute
oseltamivir also reversed "paradoxical" hyperalgesia induced by an extremely
low
dose of morphine, unmasking potent analgesia. In chronic studies,
co-administration of oseltamivir with morphine prevented and reversed the
hyperalgesia associated with morphine tolerance. These results provide the
first
evidence indicating that treatment with a neuraminidase inhibitor, oseltamivir,
blocks morphine's hyperalgesic effects by decreasing neuronal levels of GM1.
The
present study further implicates GM1 in modulating morphine analgesia and
tolerance, via its effects on the underlying excitatory signaling of Gs-coupled
opioid receptors. Finally, this work suggests a remarkable, previously
unrecognized effect of oseltamivir-which is widely used clinically as an
antiviral agent against influenza-on glycolipid regulation of opioid
excitability functions in nociceptive neurons.
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(2007.03.24)