暑さ寒さも 

彼岸までといいますが、本当に23日を過ぎたら朝がめっきり冷えるようになりました。9月中旬までの暑さがうそのようです。

彼岸花が点々と赤く咲き誇る、長良川の土手沿いを歩いていると、金 華橋のすぐ下流で10人ほどの鮎釣りの太公望たちが、長良川の波立つ瀬の中に立って、長い釣竿をたらしていました。時々、竿を引き上げてリセットすると き、秋の朝日を浴びた竿が光っていました。鮎を狙う、鋭い眼光のように。


長良の瀬 落ち鮎狙い 竿光る

この時期は、季節の流れが急に変わることが感じられるときですが、どうも自然の季節だけではなく、社会・経済・政治の季節も急に激しく動き出してきているようです。
  アメリカのサブプライムローン問題から波及した世界的な金融問題は、アメリカ大手証券会社の倒産という事態になりましたし、その他多くの金融関係企業が破 綻してきています。かつての日本の山一の破綻などバブル崩壊を思い起こさせます。アメリカは大統領選挙の真っ只中ですが、この金融危機に候補者の討論会を 延期しようなどという話も出ていました。いろんな論壇系月刊誌を見ると、アブナイ話ばかりが目立ちます。保険会社AIGもどうなるかと思っていたら、だい じょうぶですよ、ってメールが来ていました。日本はまだ被害が少ないらしく、大手銀行や大手証券会社がアメリカの会社を支援し始めました。オイオイ大丈夫 なのかな、って思います。こういう影響は、だんだんと末端まで及んできそうです。国立大学も運営交付金の減額も毎年1%から3%に増やされるそうです(今 回の金融危機とは関係ないように見えますが、巡り巡ってという事はありえます)。
 また、以前の中国の天洋食品から来たとされる毒餃子の事件も未解決なのに、今度は事故米とかMA米とか言われるカビの生えた米や農薬で汚染された米が輸入され、食用に転売された問題や、さらにはメラミンで汚染された粉乳が河北省の三鹿集団というところで作られて日本にも入ってきたという問題が出てきて、このような世界中の食品安全の問題が話題をさらっています。
 事故米の転売問題は、まったく酷い話で、MA米というWTOとの関係で政府が輸入している事故米はもともと使い道がほとんどなく、それでも廃棄することも できずにいた米が、やはり儲け話があって食用に化けていた、という制度的な問題が背景にあったものです。根は深いです。米とか、乳製品とか、現代の食品の 根幹をなす素材が、汚染され、知らない間に広まっていたという、まさにもう一つの食糧危機でしょう。背景には食品のグローバル化ということもあるでしょ う。
 悪戯に危機を煽るのはよくないとは思いますが、我々の口に入る食品には、多様な防腐剤や化学物質が含まれています。そして、それらが良い面 だけではなく、より敏感な人には悪い面も出てくることもある、ということはずいぶん以前から知られています。ただ、今回の農薬やカビ毒、メラミンなどの混 入に良い面はまったくありませんし、意図的な混入ですから犯罪ですが、それ以外でも生産工程で知らない間に混じってしまって検査体制もすり抜けてしまうよ うなものも、実は結構あるのかもしれません。
 今回の食品汚染は、外国から入ってきたものですが、昔は日本でも、たとえば2000年の雪印乳業の黄色ブドウ球菌毒素の乳製品の汚染で集団食中毒があったし、もっと昔1955年には、森永砒素ミルク事件がありました。これらは、食品工場での汚染が問題だったので、その後、工場の管理体制、審査体制が厳しくなり、普通の日本の工場ではこのような汚染はなくなっています。
 しかし、日本の工場をいくら厳しく管理しても、外国から入ってくる食品素材が多いという日本の現状では、検査体制の厳格化がいくら叫ばれても、限界がある でしょう。化学物質でも、ごく微量な成分で人への作用も良くわかっていない化学物質など、たくさんありますし、10年以上経たないと明確な作用が出てこな い、などというものがあると、そこまでいまの検査体制で見つけることは困難です。
 今回のメラミン混入の乳製品の問題は、以前にペットフードへの混入でアメリカなどで問題に なり、メラミンの動物への作用もだいぶわかってきた面はありますし、乳製品のタンパク質量の測定が含窒素の測定(Kjeldahl method)という面倒な方法をとっている、というのがわかったということもあります。少なくとも、このタンパク質定量の方法を改良する、というだけで 今後の検査体制によってメラミンなどのタンパク質偽装は防ぐことができるだろう、という予想は立ちました。そのような方法は、いっぱいあります。なぜ現場 では、赤外分析の方法が使われていないのだろう、果物などの食品には使われているのに(糖分析ですが)、と不思議になりました。ですから、測定手段の改良開発というのも、食品産業分野でのソリューションの一つであるとの確信を持てました。

(2008.09.29)