暖かい弥生

  2013年の弥生3月は、異常に暖かいようです。お蔭で桜の開花が各地からいつもより1週間以上早く聞こえてきます。といっても、大学の周りの桜はまだまだ大部分はつぼみ 状態で、若干開花しはじめた木もある、というくうらい(29日現在でほぼ4分咲き)。まあ、それでも4月になったら満開になるのも速いのでしょう。4月の授業開始 時にはかなり散っているのか も。
 昨年は、かなり開花が遅かったという印象で、昨年の東北では5月の連休のころに会津城の桜が満開でしたから、多分今年は連休前には満開を過ぎてしまうのでしょ う。

 さて、3月11日のあとのイベントとしては12日の後期入試と25日の卒業式。今回の後期入試は、定員の割合が前期入試のときより若干増えているという状況での 入試だったので(後期シフトの第1段階)、どれくらいの競争率になるか関心があったのですが、昨年より若干減ったという状況でした。来年度はさらに英語が後期で課 せられるので、さらに減る可能性はあるでしょう。今後、さらに後期の定員を増やし後期シフトを進めるのかどうか、思案のしどころです。どうも前期の国立で失敗した 人で後期に期待するのは、岐阜大学のような国立よりも就職に有利は大手の私立である、というような印象を持っているので、あまり後期シフトを強めるのは如何なもの か、とは思っています。執行部が決めることですが。
 25日の卒業式の前の21日に、普通より遅い謝恩会をしていただきました。いつものように、「よくがんばってくれましたね。これからもしっかりがんばってくださ い。」とありふれた事しか、言えないのですが、ここ数年だんだんと学生さんに対する「粘着性」が希薄になっている気がします。学生の方も研究室に対する(というか 大学に対する)粘着力もだいぶ薄れている気がしますので、やむを得ないところかもしれません。通 過することに意義がある最近の大学というところは、「学生をできるだけ成長させよう」という大学側の思惑、熱意とは裏腹に、僅かな熱気しか許さ ない大学の制度、仕組みに組み込まれた学生の意識の多くには、「あまり余計なことをせずにただ通過させてくれ」ということしかなく、「青年よ、大志を抱け!」 など鼻で笑われるような感覚を抱いています。中には昔風にすごいな、と思わせる学生さんもいますが、1割にも満たない。このような低い意識が実は社会に出て行って も続き、失われた20年の間に、いつの間にかソニーやパナソニックなどが韓国のサムスンなどに負けていく要因の底にあるのではないか、と密かに感じています。40 年ほど前の所謂高度成長期には、熱いほどの熱気が大学にはありました、確かに。昔は、お互いに敬意をもって、教官と学生が激しい議論(学問や政治や社会の問題で) をした記憶がありますが、今それをやったら、教官には何かの処分がなされることもあるので、そんな議論はできるわけがない。(ちゃんとした議論ができないからハラ スメントも出てくるのです)
 卒業式には、一応みんな来てくれて、証書の授与式も行い、新しい卒研生とも交流して、例年通りフランボワーズのケーキを食べて、お別れ。本当に、あなたの新しい 人生に幸多かれ、とこころの中で叫んでおりました。

 あともう一つのイベントは、今回が初めてですが、4年生になる前の「工場見学」で、28日にある食品企業(ノーベル)の工場 (6年前にできた)を見学するため に、郡上市白鳥に行ってきました。数年前から思っていたことでしたが、たまたま昨年夏に遊びでその工場に寄った時にお願いして、今回実現したものです。新4年生5 名ですが、残念ながら1名が急に風邪を引き熱を出したので欠席したので、4名を連れて車で2時間ぐらいの156号線の小旅行をしてきました。新修士の学生からはア ルバイトということで参加はなし。工場でいろいろ話を聞く、というのは企業のことを知る上で非常に基本的なことなので、就活中の学生さんも修士を出てから就職を予 定している学生も、一度はちゃんと工場見学を経験しておいた方がいい、という教官側の熱意の現れで呼びかけたものです。
工場見学
 この工場では、最近健康食品の分野では有名になったDHA/EPA1g入りのヨーグルトと、様々な乳酸飲料(健康食品)を生産しています。この企業は、主に宅配 サービスでそのヨーグルトなどをお客さんに届けるという仕事をしているので、一般のスーパーなどには置いてないですから、ほとんど名前は知られていないと思いま す。それにほとんど中部地区でのみ仕事をされているので、全国的に有名でもない。ただ、学会活動もよくやられていて、健康食品の分野ではよく知られた存在ですが、 一般に人々には知られていない。それでも固定客はしっかりあって、ヨーグルトは毎日2千個、乳酸飲料は毎日5万本生産し、お客さんに届けられています。宅配という ユニークなビジネスをされている企業が、どのように工場を運営しているのか、商品開発はどのようにされているのか、など聞きたいことてんこ盛りの見学でした。
 9時に大学を出発し156号線を通って11時ちょうどに工場に到着し、すぐ着替えてクリーンな工場の中を案内してもらいました。結構大きなタンクと縦横無尽に張 り巡らされたパイプが、ほぼ自動で制御されて毎日12時前には流れは止まります。1時間ほどじっくりと見学させてもらいました。できたばかりの乳酸飲料も飲ませて いただいて、出来立てというのは何にせよいいものです。工場の中の大部分の施設はガラスボトルを使った乳酸飲料用になっていて、DHAヨーグルトのラインはごく一 部でした。ちょうどケースに一定量ずつのヨーグルトが入れられ、蓋がされて積みあがっていく様子を見ることができました。
 この工場で使う水は、井戸水だそうで、敷地内の地下から汲み上げられているそうです。また廃液も、非常にクリーンに処理され、長良川の水より綺麗にされたうえで 長良川に流されています。毎月県から検査が入るようですが、ISO22000も取っているし十分信頼されているようです。
 ほぼ1時間の見学が終わって、近くのレストランへ会食に。値段の割にはボリュームのあるランチでしたし、味噌かつの味も良かった(食べきれない学生さんもいまし たが)。会食の後は、午後1時過ぎから工場長と開発スタッフお二人を交えて意見交換会。学生さんの方からも色んな質問が出され、特に今回のヨーグルトの新商品開発 に絡む話が盛り上がりました。以前の商品はごく僅かですが魚臭い感じのする人もあったのですが、今回のは魚臭さの消臭がかなり進んだそうで、さらにヨーグルト自体 の味も良くなり、一個当たりの容量は以前より少し少なくなり(食べやすくなり)値段も安くなって、それでいてDHA/EPAの量は変わらずで、なかなかの自信作の ようです。私も毎日食べていますが飽きません。
 そして話の中心は、いかに消臭効果を上げているのか、という点でしたが、これは企業秘密。大手の食品企業の研究所からも問い合わせがかなりあるらしいのですが、 ヨーグルト自体を調べてもわからんだろう、と工場長は自信満々でした。確かに数年前から消臭(マスキング)法の開発では苦労されていたのは私も知っていました。
 あとスタッフの中には機械系から転職された方がおられて、その方の話も貴重でした。こういう規模の工場では様々な方面の智慧が必要になり、一人のスタッフであっ ても、お客さんの気持ちを分かる営業の智慧や食品の智慧や医学の知識やポンプやローターなど機械の知識など様々な智慧を身につけないといけない、という話をされ て、また会食の時は70歳の工場長からも英語は普通に必要だよ、と言われたり して、学生さんにはかなりインパクトのあるディスカッションだったのではないか、と(指導教員としては)思いました。
 2時間近くディスカッションをして、学生さんはヨーグルトなどのお土産ももらって、工場の皆さんの良いおもてなしに深く感謝して、3時ごろに工場を後にしまし た。
 帰りは自動車道で、途中関サービスエリアでお買い物。このSAによるのは初めてでしたが、関の刃物がいろいろ置いてあり、なかなか面白い。でも買ったのは飛騨牛 カレーパン、カレー味が絶品でした。大学には5時前にたどり着きました。

 ということで、来年やるかどうかは分かりませんが、いろいろ実りある工場見学でした。
 来週からもう4月。新しい学科体制になって、教育体制もちょっと混乱しそう。学生さんに英語を今まで以上に学んでもらおう。


(2013.3.29)