驚愕と悲哀と慄然の3月(後半)そして復活へ

 あれやこれや心配している間に4月になってしまいました。
 来週から新学期の授業が始まりますが、なんか気分が乗りません。
  3月11日の東日本大震災から3週間が経ちましたが、まだまだ復興にはほど遠い状況です。なにしろマグニチュード9.0の地震の揺れ自体による被害の大き さよりも、大津波による被害の面積と規模がはるかに大きく、青森、岩手、宮城、福島の4県33市区町村の浸水面積は443平方キロメートルで、国交省の分析では「建造物の多くあるいはほとんどが流失した区域」が51平方キロメートルになっています。これは、関東大震災の焼失面積35平方キロメートルや、阪神大震災で土地区画整理事業が行われた約3平方キロメートルと比較しても、想像を絶する被害規模となります。がれきの山と焼け野原のような町や市全体の様子、3週間たっても手つかずの脱線して横倒しになったままの電車などを映像で見せつけられると、絶望感に襲われます。
  それに、死者行方不明者の数が、2万8千人を超えるとの報道もあります。死者に対しては火葬場が間に合わず、大勢が土葬になっていると聞きます。捜索中の 行方不明者の数だけで1万7千人を超えると云われていますしまだ増えている状況です。福島原発地域の不明者はまだ1000人以上いるようですが、高濃度の放射能汚染のため回収作業 ができない状態であるとも伝えられています。また、避難民の数も35万人を超えるような大人数で、全国各地に散らばっているようですが、一つの町や村の単 位で避難しているところも多くあります。
  それでも遅々としてではありますが、交通網や輸送網の復旧の話は伝わってきます。しかし、まだ肝心の東北新幹線の、福島や仙台までの復活はまだで、4月末 まで掛かりそうだ、ということですので、本格的な復旧復興にはさらに時間がかかりそうです。それでも、4月になり、新学期が始まり、大きな人の移動も起 こってくる時期ですから、これからどのように「復活」していくのか、そのロードマップが明確にされないといけません。
  ところが、そのような将来 図が描けないような事態も同時進行で起こっていて、それが福島第一原発の問題です。高濃度の放射線に汚染された水の発見や海への漏出の発見など、次々とト ラブルに見舞われて、一向に収まる気配がありません。高汚染地帯でほぼゴーストタウン化した20Km圏内の、この福島県双葉 郡の地域だけの問題ではなく、幅広く散らばる放射能汚染に影響される範囲は、東北関東圏一帯におよび、さらに海の汚染まで入ってくると、農業漁業に関係す る多くの東北の人々に長い長い苦痛を与えていくことになります。関東地方の計画停電の問題もあり、電力需要の比較的少ない5月までには、世界的な協力体制 の下、福島原発の廃炉に向けた道程を速やかに進んでいける見通しを立てることができるようになってほしいと思います。東京電力の対応の酷さが目立ちます が、これは一電力会社だけの問題ではなく、これまでの長い原子力行政(電気エネルギー行政も含む;政府の政策と「原子力村」の関係者達の関係)の問題なの ですから、東電だけをスケープゴウトにしてはならないと思います。
 日本の電力問題という、国の経済活動に深刻な影響を及ぼすエネルギー問題と深く関係する事 柄だけに、この汚染地帯からの避難民をどうするかという問題だけでなく、今後の東日本一帯の5年10年かける復活復興構想を真剣に議論していくことが必要 でしょう。
 現在はそこから離れたところで比較的安定に生活している自分がいますが、私の故郷に起こっている問題でもあるので自分自身のこれからの問題でもあります。みんなが復興ビジョンについて議論していく段階です。思い付きを下に記す。

  (1)エネルギー問題: 設置から20年以上古くなった旧型原発(20世紀の遺物;特に冷却剤として水を使うタイプは海岸に造っているので津波の影響を受けやすい)はすぐ廃炉に向けて準備し、すべての放射線廃棄物処理を可能にすること。こ れが第1歩。次に来る東海地震の震央に立つ浜岡原発はもってのほか。これからは、自然エネルギーをもっと活用する政策を実施し、研究段階のものをすぐ実用段階に上げるように集中的に投資すること。超小型で安全 な原子炉(4S)の開発研究も進んでいるらしいが、劣化ウランやナトリウムなど人工的で危険なものをつかいまだ危ういので、都会の地下に造れて地震で 潰れても安全に廃止できるようなものであることが実証できたら、考慮されてもいいかもしれない。それができたら、超安全な原子炉を使って、空の緊急輸送システム(ヘリなど)が大量に作れるかもしれない。
  (2)津波被災地の復興: がれき(ほとんどが建造物由来)の撤去と再利用が第1歩。瓦礫から金属素材、木材、プラスチックなどをより分け、使えるものは 今後の堤防素材として利用できないかを検討。宮城県だけで1800万トンに のぼるとされているがれきは、再度構築する必要のある堤防の素材として使う、と いうのは自然な流れ。30mの津波でも大丈夫な、堤防の構築。しかし、今までのような「止める」だけの機能を持つ堤防という構築原理は見直す必要がある。 津波のエネルギーを分散しながら波力でも発電できる仕組みを組み込んだ堤防機能ができるように。あと、住宅と公共施設がある広い高台(標高50m以上)の 開発。低地に は津波が来ることを前提にした6階建て以上の菱形の強固な鉄骨鉄筋ビル(水の進行エネルギーに逆らわない形)をつくり、会社や仕事場が入るようにする。 1000年に1回の大津波とい うなら、1000年後の子孫たちが安全に暮らせる海岸沿いの都市設計が必要。
 (3)原発被災地の復興: チェルノブイリという前例があるので、 そのようにならざるを得ないのか。まず廃炉になった設備を解体し危険物は地中深く埋めて、何万年も安全なようにする。そのうえで、その20Km四方を特別 地として国が買い上げ、県から切り離し、先進的エネルギー実験都市、未来体感都市、観光地になるように設計していく。そこは新しい方式で電気エネルギーを作って まわりに供給していくのを使命として、人間ではなく、ロボットが主体で活躍している町に。チェルノブイリでは、今も地上に放射線を出し続けている廃材などが転 がっているという。そんな状態にしてはならないと思う。 
 (4)各大学工学部に防災学科の設立を: これからの防災は、被災者のケア医学なども含めたまさに総合科学になっていくであろう。京大には先進的に防災研があるが、役に立っているのか。次に来るで あろう東海・東南海・南海地震は、マグニチュード9.6以上になると考え(従来はM8クラスとの予想)防災基準を見直すべし。

(2011.04.03)