B2B

Back_to_the BasicBTTB とはちょっと違いますが、 Back_to_the Bench B2B;この場合インターネットで流行の「ビジネス Toビジネス」モデルのことではありません ^^; という主張が、あのヒトゲノム計画を推進したシドニー・ブレンナーからなされているという記事をある所(GenomeWebサイト)で読みました。最初のところだけを引用してみます。

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Urging Researchers to Forget the Genome, Sydney Brenner Sells a Cell Map

By Bernadette Toner, BioInform editor

NEW YORK, Sept. 9 - The next big genomics project may not be a genomics project at all, if Sydney Brenner has anything to do with it. The 75-year-old driving force behind the Fugu genome project is urging the scientific community to step back a bit from the genome and focus on a new mission: Creating a function-based cell map by 2020 .(以下略)

--全文は こちらで。

  BTTBは、坂本龍一らが音楽シーンを創るに当って基本に帰れ、と訴えた 99年頃からのムーブメントだったように記憶していますが、上の生命科学における B2Bの訴えは、ゲノム情報とインフォーマティクスがあれば生命現象はすべて解明できる、などという夢想的な考えを退けて、もう一度地道な実験を実験机に向かって行っていくべきだ、という、すごく真っ当な意見だと思います。こういうことをいちいち言わなければならないほど、世の中は浮ついている、という警告なのでしょうか。

  ITバブルの次は、バイオバブルか、などと囁かれている昨今、実績成果と足元をしっかりと見つめていく必要がありますが、アメリカでは S.Brennerのような実力者が提起するまでになっているものの、さて一方、日本では「今度こそ負けてはならじ」と、やはりすそ野を広げるのではなく、相変わらず「一極集中」「トップダウン」で短期に効果をあげようとハッパをかけているように見え、上のような警告を発する実力者サイエンティストの姿が見えません。バブルというのは、どうも実績や実力以上にかなり高い期待度や投資度があるときに起こるようで、結局は将来足を引っ張ることになってしまう、というのが歴史の教訓です。

 私自身はバイオインフォやベンチャーなど気持ち的には推進派であることは自覚していますが、自分の思いとはいくらか世の中の動きがずれてきて、ある部分暴走気味と感じてくると、やっぱり B2Bだな、という思いが強くなってきます。アクセルとブレーキは適度に利かせておかないと、やっぱりだめなんですよ。考えて御覧なさい、 ITは人々の間に広く行き渡りましたし、ケイタイなどに見るように多くの人が受け入れていますが、バイオは今だ食物でも「遺伝子組換え」野菜すら多くの人々には受け入れられていないように見えるじゃないですか。バイオはまだ基本( Basic)が浸透していないのですね。多くの人々に浸透できないようじゃ、新産業の牽引はできません。人々は、基本的には便利で新しいものに走りますが、口に入るものだったり自身の体や生命に直接関わるものには、便利で新しいものであっても(いや、であるからこそ)当然慎重になります。当たり前の話です。だから、バイオは、人々の間に浸透するにはすごく時間がかかると思うのです(特に八百万(やおよろず)の神が基本にあり自然を大事にする日本では)。ITや自動車などと比べたら桁違いに時間がかかるはずです。IT産業などと同じ時間スケールでバイオを捉えようとしたら、私には暴走に映るのです。バイオは、教育を含め基本から一歩一歩、先端よりもすそ野を充実、というのが結局は将来の近道じゃないのかな、と感じています。

 1年目の「9月11日」以降は、またいろんな気になることが起こっていますね。こういうのを眺めると、 BTTBB2B だよ、やっぱりな、と思います。ブッシュ・ドクトリンだなんて、大丈夫かなホントに、と思います。9月も中旬を過ぎて、爽やかな季節になって大変自然は心地よいのですが、ドロドロした世の中の動きで心が不健康になりそうです。もっとちゃんと地面を踏みしめて歩いて、汗を流そうと思うこの頃です。

(2002.09.21)