00年代の終り

 2000年から2009年までを00年代とすると、2010年からの10年間は10年代ということになります。
  この00年代は私にとっても印象深い岐阜に来てからの10年で、特に09年は忘れてはいけない年、00年代の終りの年になりました。ですから、つい先日研 究室で「鍋会」と称して学生さんたちとちゃんこ鍋を囲みましたが、「忘年会」とは言いたくなかった。この年を忘れようとするなどもってのほかです。皆が記憶にとどめて置く必要のある年なのですから、「憶年会」の方が良かったかもしれません。
  20世紀のシステムが、「幼年期の終わり」とでもいうように終わって、21世紀のシステムに大変換(転換)するときの、最初の変化の始まりの年になったの ではないか、と思います。特に、政治・経済とスポーツの分野で大変記憶に残ることがありました。歴史の替り目に立会った感のあるアメリカ・オバマ大統領の 誕生、そして日本での長かったひとつの政権が交代したこと。もちろん、このような謂わば最上部構造が大きく変化をしたとしても、下部構造や人々の意識まで 変化するまでにはかなりの時間を要するでしょうし、対立する相手も健在することですから、理想通りにいくことは叶わないでしょう。下部構造たる経済金融 が、今後も停滞ないし下降を余儀なくされるというこれからの時代ですから、理想と現実のギャップが拡大することも当然予想されます。それでも政治がうまく 適応して、考えられる最良の政策をその時々で実施していければ、激しい混乱は避けられるものと思います。希望的には・・・。
 COP15での「コ ペンハーゲン合意」も、形だけの「留意する」だけにとどまり、CO2排出規制に関する世界的な合意と、それに基づく厳しい政策の実施、という方向への動き 出しも、なかなか困難なようです。この方向も、21世紀システムのひとつの重要な要因になるはずですが、そう簡単にはいかない。でも諦めることもできな い。緊張の続く時代です。

 昨年ぐらいから週末は韓ドラ時代劇のビデオを見ることが多かったのですが、東アジアの歴史のダイナミックさを味わうに は大変面白いドラマが多くありました。「チュモン」、「ヘシン(海神)」、「ソ・ドンヨ」、「テジョヨン」、「風の国」、「チョンチュテフ(千秋太 后)」、「ヨンゲソムン」など、ずいぶん沢山あって、大変な時間と労力が掛かっていることが感じられます。それらを見ると、多くの国が滅亡し、さらに多く の国が興ってきて、その度に多くの人々が死に、王族から奴隷になったり、奴隷から一国の開祖になったりと、日本ではあまり想像つかないような厳しい変化が あったことがわかります。ヨーロッパの歴史においても似たような大きな変化が国と国との間にあったはずです。そういう変化から見ると、09年の日本やアメ リカの変化などは取るに足らないレベルのものかもしれませんが、深層底流のように周期の長い大きな変化に繋がっていくような感じがします。
 最近NHKで司馬遼太郎の「坂の上の雲」 のドラマが始まりました。「まことに小さき国が開化期を迎えようとしている」で始まる小説のドラマ化ですが、近年にないくらいのスケールの大きなドラマ で、韓ドラ時代劇とリンクして想像してしまいます。韓ドラ時代劇にもしょっちゅう登場する「遼東」が、「坂の上の雲」でも日清日露の戦争の舞台にも登場し ます。小さな少年のような国が、輝ける思春期の国へ突き進んで行った時代でした。しかし、その後第2次世界大戦での悲惨を経て戦後の日本が復興し現在に至 る過程で、「まことに成熟した誇れる国」になるはずであったこの国が、未だそのレベルからは遠く離れて居り、未だ他力頼みで自分の足だけでは立っておれ ず、未だ自力で自らの政権をすら交代させることができないでいました。それがようやく、選挙だけで政権交代ができるというところまできました。ようやく成 人らしくなってきたというところでしょうか。

  クリスマスの日には、来年度の日本の予算がまとまったようです。なんとか辻褄を合わせようと、相当無理をしているな、という印象の予算の中身です。話題性 の高かった事業仕分けによって大きく削減が予想されたもの、特に次世代スパコン予算は、期待したほどの透明性はありませんでしたがかなり復活したようです。理研など関係者はほっとしたことでしょうが、今後の進展を見守りたいと思います。名目は、「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラの構築 190億円 ⇒ 228億円(+37億円、+19.7%)」となったようで、削減どころか逆にかなり増えています。方針内容は若干変更されて、「計画を大幅に見直し、開発側から利用者側へ視点を転換するとともに、開発の加速に伴う追加経費を削減する」となるようです。理研理事長がおっしゃった「歴史の法廷」に皆がたったわけですから、あと10年後(5年後かな?)どんな審判がくだされるか、この「次世代スパコン予 算を復活させたこと」への関心を持ち続けたいと思います。

 他に、関心のあった国立大学法人への運営費交付金の毎年1%削減は、0. 94%削減という極微小な(0.06%分)改善(?)になっただけでした。大学の教育ではある授業を止めるように決めたとしても、「学年進行中」という考え方があって数年 間は授業を維持することが多いのですが、国の予算でも「進行中」のものはすぐにはゼロにはできないものなのでしょう。再来年以降、大学の運営費交付金は削減なし、それどころか増加のほうに進んで欲しいと思っています。これは、他の大きな科学技術予算を一部削ってでも、です。科研費は1.5%増(+30億円)になるので悪くはないでしょう。
 はやく「国家戦略室」でしっかりと国家としての戦略を出して欲しいと思いますし、科学技術分野では日本版NSFの創出を期待したいと思います。2010年は、その意味で戦略確立年であり、今後の10年代のこの「国のかたち」を決める重要な年になるのではないでしょうか。
 
  18日から19日(土曜日)にかけて、この岐阜市内にも大雪が降りました。この数日はかなり寒かったのですが、世界的にも、欧米では大寒波だったらしく、 こういう時には「暖かい方がやっぱええなあ」と思うのですが、1週間もすると戻ってしまいます。クリスマスには、ほとんど雪は残っていませんでした。お正 月にもこのあたり雪にはなりそうにありません。結局、我々はこういう環境に適応した生活スタイルにならざるを得ません。環境は人間の手ではすぐには良い方向には変えられないのです から。
 さて、あと数日で今年も終わりですが、2010年はどんな年になるでしょうか?少なくとも、個人的には、仕事も生活も楽しみながら、ちっちゃな予算でも充実できるようにはしたいと思っています。学生さんたちも充実した年を・・・。それにしても1~3月は例年になく忙しそう。。。

(2009.12.28)