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 ピシウム(Pythium)
   ◎ピシウム(根腐れ病菌)の仲間は150種以上見つかっており、重要病害である。
   ◎ピシウム(根腐れ病菌)の感染能力は著しく高く、いったん発病すると圃場の作物が全滅する場合もみられる。
   ◎ツユカビ目に属し、土壌水分が多いときに発生する。
   ◎土壌中では「卵胞子」の休眠形態で存在し、環境の変化に対して安定で、越冬・越夏する
   ◎「遊走子嚢」から「遊走子」と呼ばれる遊泳形態を示すものを大量に放出し、水中を泳いで感染する。
 バラで発生した高温性ピシウム(Pythium helicoides:ピシウム・ヘリコイデス)
   ◎1996年にロックウール挿し木苗から単離され、現在、ロックウール栽培で急速に広がっている。
   ◎これまで日本に存在しない亜熱帯・熱帯性ピシウム菌である。
   ◎土耕栽培では発生しない
   ★菌糸の伸長に適した温度は30〜35℃である。
     【根域の温度(ロックウールベッド内の温度)が30〜35℃に達すると被害が著しくなる
   ★遊走子の発生に最適な温度は25〜30℃である。
     【養液タンクや源水タンク、ベッドの養液の温度が25〜30℃になると被害が一気に広がる】   
 症状
   ◎7月から9月の高温期に発生する。
   ◎下葉が黄変する。
   ◎根が黒変する。
 対応策
  【もし被害が出てしまったら】
   ★被害株を早急に抜き取る
   ★被害株に隣接するベッドに、パンソイルやリドミルなどを潅注する
  
【病気が出ないようにする方策】
   ★ノイバラを台木として用いる
   ★根腐れを起こさないように養液管理を充分行う
     (養液濃度が高いと肥料焼けによる根腐れが起き、これがピシウムの感染を助長する)
   ★養液タンクや源水タンク内に土壌の混入が起きないように周辺を清潔に保つ
 予防法
  ●共同研究者の岐阜大学景山幸二教授の研究結果から以下のことが判りました。
  ★バラ鉢物の循環式栽培において、回収養液中の遊走子の密度を年間を通じて測定した結果、

  1.4月下旬から6月中旬にかけて遊走子の発生がピークを迎えます。
    これは、養液の温度が25−30℃に達することと一致しました。
  
2.7月から9月にかけては遊走子の発生が減少しました。
    これは遊走子の発生が35℃以上で低下することと一致します。

  3.9月下旬から10月にかけて養液の温度が25−30℃に低下し、再び遊走子の発生が活発になります。

  ★以上のことからピシウムの発生は以下のような消長を示すと考えられます。
  
◎冬の間はピシウムに罹病していても症状が現れていない潜在的感染株から、4月〜6月にかけて遊走子が発生し、新たな株に伝染していきます。
  ◎しかし、ロックウール内の温度が30℃以下なので感染しても発病することはありません。
  ◎4〜6月の期間中に遊走子が感染したものは、7月になるとロックウールの温度が30℃以上に上昇し、一気に発病し始めます。
  
◎9月下旬になるとロックウールの温度が30℃以下になるため発病は見られなくなりますが、遊走子の発生が再び活発になり始め、健全な株に伝染します。
  ◎しかし、発病は見られず、ピシウム自体は休眠状態となります。
  
◎感染したけれども菌が休眠状態となっている株は、翌年の4〜6月になると再び遊走子が発生し始め、次々と伝染のみを行います。(最初に戻る)

 したがって、4月から6月の時期に、ピシウムの発病は見られないけれども、遊走子の発生を抑える薬剤処理を定期的に行うことで、7月以降の高温期の発病を効果的に抑えることができると考えます。同様に、9月下旬から10月にかけての遊走子の発生を抑える薬剤処理も翌年のピシウムの発生を抑えるためには効果的です。