Liki River Farm Ltd.
Box 537 Nanyuki Central 10400, Kenya
Liki River Farm Ltd.はケニア山北西の麓にあり,標高2500mに位置します。ケニアのバラ大産地ナイバシャ湖より標高が高いため気温が低く,昼の最高気温は30℃,夜間は12℃まで低下します。
Liki River Farm Ltd.はVegpro Group (Vegpro Kenya Ltd.)に属しています。Vegpro Group はヨーロッパ向け野菜の生産・輸出会社で,Liki River Farm Ltd.は3カ所に農場を持っています。野菜の生産は97年から開始し,75haの農場で生産した野菜をヨーロッパ(主にイギリス)に輸出しています。多くの土地は借地で,借地料は5ユーロ/uとのことでした。
切花生産はバラ17haで,トルコキキョウ(4ha),カーネーション,ユリなどを生産し,主にイギリスに輸出しています。平均して23人/haのケニア人労働者を雇用しており,総雇用者数は700名とのことでした。下右の写真は,従業員の送迎用バスです。
ケニアでは工業などの産業が発達しておらず,一般の就職先はほとんどないため仕事は販売店従業員以外にはありません。そのような状況で農業生産企業の従業員としての採用は大きな現金収入源となるため,周辺の住民にとって農業生産企業は大きな雇用母体となっています。
都市部の一般労働者の人件費2.5$/日とのことですが,Liki River Farm Ltd.での雇用契約は1$/日程度とのことです。訪問途中で,デルモンテのパイナップル農場に向かうトラックに50人が乗っているのをみかけました。
生産施設内はよく整備されており,収穫残査などはきれいに掃除されていました。また,新しい品種の栽培試験コーナーもあり,オランダなどで育種された品種の収量性試験が行われていました。
Liki River Farm Ltd.で生産されたバラは,イギリスのスーパーマーケットTESCOやSainsbury,Waitroseに輸出しています。7日間の日保ち保証をした6色のバラをパックして,3.99ユーロ(約600円)のバーコードを付けたパッケージに加工して直接輸出します。出荷するバラの規格は50cmが基本で,42〜62cmに統一しており,これ以上の切花の場合には50cmに切り揃えているとのことです。切花の選別は長さと蕾の大きさで行っていました。ケニアの気候はバラに適しているため,時には1mのバラを50cmに切って出荷する場合もあるとのことでした。
生産しているバラ品種は,レッドカリプソが20%,アクア(Aqua:ピンク)が20%です。
畝高は30〜40cmの高畝栽培で,ベンディング方式の整枝法を採用していました。いわゆる土耕のアーチング栽培ということができます。定植密度は7.5株/uで,定植後60日後に折り曲げし,100日前後から採花を開始し,その後は50日ごとに採花を行います。収量性は高く,200本/u(660本/坪)と日本の2〜3倍の収量性です。輸出先のイギリスの需要期が12月のクリスマス,2月のバレンタインデー,5月の母の日であることから,この時期の出荷を目指して生産調整を行っています。
栽培はすべて養液土耕による点滴栽培で行われていました。
マネージャーはインド人でインドの大学で花き園芸学を専攻し,2002年にケニアに来たそうです。
ケニアでは根頭がんしゅ病が蔓延しており,台木を自家採取して挿し木した場合には根頭がんしゅ病を防ぐことができないため,台木の組織培養による繁殖を行っていました。
根頭がんしゅ病の被害は甚大で,実際に1987年にイスラエル資本でバラ生産を行った会社が根頭がんしゅ病の蔓延で倒産したことがあるとのことです。
台木はナタルブライアー(natal briar)を用いており,オランダの苗生産会社(Vegmo Plant B.V.)と連携して組織培養苗を生産し,台木として使用しています。組織培養苗はジフィーポットあるいはココピートで鉢上げし,30日間の順化処理の後,7〜10日間ハードニングして定植します。
1haの順化施設では1ベッドあたり7000株が順化されており,通路を挟んで8ベッドが設置されているハウスが5棟あることから,培養苗の順化能力は,(7000×4×2)×5=280,000株と判断できます。
現在は培養も行っていますが,培養フラスコ苗をテラニグラ社より輸入していました。
培養苗の順化室と順化終了後の状態
培養苗は定植して栽培した後,長く伸長したシュートを切り取って,ミニプランツ(接ぎ挿し苗)の台木として用います。
下の写真は,培養苗を栽培してシュートを切り取って,接ぎ挿し苗としての台木の選別作業の様子です。
下の写真は,接ぎ挿し苗の完成状態のものです。
下の写真の左2枚は接ぎ挿し後の発根施設の様子で,上からミスト装置が多数下がっているのが判ります。
右2枚は発根が終了した後の順化過程の施設です。ミスト装置が設置されていなくて,湿度を次第に低下させて順化を行います。
訪問した農場では土耕栽培を行っていましたが,別の農場ではココピートを用いての養液栽培も行っているとのことです。
下の写真は,6月25日に定植したDuetの状態です。
下の写真は4月に定植し,定植後2カ月後の状態です。
品質管理や環境対策にも配慮しており,Eurep-GapとMPSの認証を取得していました。
ハウス建設費は15〜16ユーロ/u
石油は63シリング/リットル
12年前はケニア人資本の切花生産会社が15社程度あったが,現在は3社に減少している。