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Tanflora Infrastructure Park Ltd.
Krishnagiri, Tamilnadu, INDIA

2007年3月19日に米村浩次氏団長のインド・バンガロール・バラ産地視察に参加し,Tanflora Infrastructure Park Ltd.を訪問し,施設を見学しました。
 1995年に設立された切りバラ生産会社で,20haの生産温室に加えて,さらに350haの敷地のバラ生産団地を建設中です。新しいバラ生産団地では50haの新たな生産施設が作られていました。この施設面積は現在世界第3位です。
 今回の視察ではバンガロール市南東90kmのKrishnagiriの新しいバラ生産団地を視察することができました。タミールナド州の標高950mの高原状の台地に位置し,周辺には広大な原野や農地が広がっていました。

 建設中のバラ生産団地の温室は,2連棟2haの温室で計25棟,温室総面積は50haにおよびます。花き生産団地の建設は3カ年計画で,7.5kmの周辺道路の整備,総延長20kmの排水路の整備,7,500uの選花場(150m×50m)や1haの品種展示温室の建設が行われます。

  

 訪問した時には巨大な選花場が完成しており,選花場には事務所,冷蔵庫,日保ち検査施設がありました。

 

 冷蔵庫は20m×15mのものが8棟あり,APEDA(Agricultural and Processed Food Products Export Development Authority)の補助を受けて建設されていることが明示されていました。このうち3棟の冷蔵庫にはビッシリと収穫されたバラが貯蔵されていました。しかし,なかには灰色かび病の発生やベントネックがみられ,必ずしも管理が良いとはいえない状況でした。選花は長さと花の大きさで選別されます。

  
 

 生産団地の投資額は2億2,500万ルピー(5億8500万円)で,これに加えて,50haの生産施設の建設費3億4,000万ルピー(8億8,400万円)が投資される大規模開発プロジェクトで,Tamil Nadu Industrial Development Corporation (TIDCO:タミルナドゥ州産業開発財団)やインド政府(APEDA:Agricultural and Processed Food Products Export Development Authority)からの補助を受けています。50haの生産施設の完成は2007年6月とのことでしたが,進捗状況は50%程度といったところでした。

巨大な貯水タンクが各所にありました。

 Tanflora社の生産施設は,支柱は鉄製で屋根が木製の構造です。温室の建設費を計算すると,884,000,000円÷500,000u=1,768円/uになります。Rosette, Agro-tech社の所で示した温室建設費:イスラエル製のパイプハウスが500ルピー(1,300円)/u,木製ハウスは200ルピー(520円)/uに比べると少々割高ですが,日本の温室建設費と比較するとかなりの低価格です。

  

 別の場所にある20haの生産施設の現在の従業員は350人で,年間3,000万本を生産しています。2007年のバレンタインデーには,世界各国に向けて100万本を輸出した実績があり,年間を通じた販売としては10〜20%が国内販売で,それ以外は輸出とのことです。輸出先は,オランダ,ドイツ,イギリスなどのヨーロッパの他,中国,オーストラリア,シンガポール,中東諸国などです。近い将来,日本へも輸出する予定とのことで,全生産量の60%を日本向けとしたいとの希望が述べられました。
生産団地が完成すると年間6,750万本の切りバラ生産が行われることになり,周辺の農村から1,000人の新たな雇用を考えているそうです。
 栽培品種は35品種で,インタープランツ,ヤンスペック,コルデス,レックス,オライ,フランコなどの品種が栽培され,130以上の品種について栽培適性試験を行っています。日本への輸出に向けて,ローテローゼを植栽したいとの話でした。
 切花品質検査も行われていましたが,条件は暗所・27℃でした。一般に,ヨーロッパの切花日保ち検査仕様では,明所・20℃となっていますが,視察団参加者一同「???」の状況でした。

 

 切りバラの生産性は150本/uの収量を確保しているとの話でしたが,新生産拠点のバラの生育状況はあまり芳しいとはいえない状況で,3年目の株は生育が悪く,150本/平米の収量が確保されているとはとても思えない状況でした。

  

オンシツコナジラミが多発しており,株に触れると数十匹が飛び立っていました。葉の裏をみると幼虫や蛹などがビッシリ付いており,残念ながら防除が行き届いていませんでした。

 

 今回視察したバラ生産会社4社のなかで最も生産技術が低く,広大な生産団地の建設という巨大構想とは裏腹に,現実として高品質を求める日本への切花輸出はできないのではないかと感じました。この状況が続いた場合には経営上,大きな問題が発生するのではないかとの危惧を抱きました。
 ただ,取引している種苗会社はオランダのバラ育種会社が多いことから,いざとなった時にはオランダ資本が乗り出してくる可能性も否定できないと思いますが・・・。

 このバラ生産団地の建設にはインド政府や州政府が大きく関わっていますが,この生産状況ではとても投資に見合う販売ができるとは思えない状況で,建設中の温室もほとんど進んでいないように感じました。
 下の写真はバラ生産団地の中央に位置する選花場の正面玄関前にある従業員の憩いの施設ですが,植栽されている樹木が枯れていました。
 視察団に同行した方の言葉です。
「従業員の福利厚生施設に気を配っていない会社の従業員は労働意欲が低下します。この会社は生産状況から見ても,従業員の意欲が低下している可能性が感じられます」