BELLA ROSA
Tabacundo, Cayambe, EQUADOR
【切りバラ生産】
2008年9月23日にJFMA(日本フローラルマーケティング協会)主催のエクアドル・コロンビア視察でBELLA ROSA社(ベラ・ローサ社)を訪問しました。
BELLA ROSA社は1996年に設立された切りバラ生産会社で、エクアドルの首都キト市から車で北に1時間のCayambe市の西Tabacundoにあり、北緯0度04’26’’のまさに赤道直下です。標高は3,000mで、年間を通じて最高気温19℃、最低気温6℃です。エクアドル第3位のカヤンベ山(Mt. Cayambe:5,790m)の氷河からの雪解け水と肥沃な火山灰土を利用してバラ生産が行われています。
生産面積は23haで生産品種は67品種です。面積の割には多品種が生産されていました。
BELLA ROSA社は9月22日に訪問したNEVADO ECUADOR社に比べて標高が高く、平均気温が低いことからベーサルシュートの発生が多く、超長切花が数多くの品種で生産できていました。展示されていた超長切花品種はFriendship、Blush、Forever Young、High&Booming、Latin Lady、Rockefellerでしたが、ホームページではHighlanderの他ほとんどの品種が100cm以上で出荷可能と表示されていました。
栽培方式は養液土耕で、仕立て方はいわゆる切り上げ方式です。採花位置はシュートの基部15cmを残して採花します。採花位置から発生する芽は1芽に芽掻きします。シュートが太い場合には基部から30cm残して採花し、その場合には2芽を残して芽掻きし、2本仕立てにします。
標高が高いため気温が低く、夜間の保温効果を高めるために蕾ネット(フラワーキャップ)がすべての花に付けてありました。
栽培ベッドの通路はきれいに清掃されています。
生産温室には換気用の循環扇とダクトが設置されており、昼間の気温の上昇による温度ムラを防ぐ対処が行われていました。
生産温室の側面は黒色の防虫ネットが張られており、害虫の侵入を防いでいます。生産温室の通路はコンクリートブロックが敷き詰められており、作業車の通行が容易になっています。通路の中央にはイネ科の植物が植えられていましたが、天敵のためのバンカープランツではないかと思います。
BELLA ROSA社でも台木のシュートを伸長させて同化枝として用いる栽培方式についての試験が行われていました。ミニプランツ苗生産では、台木の芽はすべてナイフで削除して穂木を接ぎ木しますが、この栽培方式では、台木の芽を1芽残して芽接ぎをしています。残された台木Natal Briarの芽は当然萌芽してきますが、その台木のシュートをアーチング仕立てのように通路に折り曲げて同化枝として利用していました。日本で開発された「アーチング栽培」方式の発展型といえると思います。
生産温室で収穫された切花は、温室内で第一次選別が行われます。選別を行う場所は遮光シートで覆われており、切花の温度上昇への配慮がされていました。
選花場では独特の選花方式をとっていました。収穫した切花の蕾の大きさによって第1次選別が行われ、その後に切花長による選別が行われます。
染色処理した「青バラ」が生産されていました。
エクアドル政府の植物検疫検査許可を受けた生産会社で、自社での検疫検査で証明書を添付することが認められていました。
冷蔵庫は3℃に制御されており、冷蔵庫の中央には温度と湿度を測定するデータロガーが設置されていました。
冷蔵庫には搬出窓があり、搬出窓から直接保冷車に地味込みが行われ、コールドチェーンの徹底に気が配られています。
箱詰めは、70cmの切花の場合には25本束が1箱に8束の計200本、90cmの切花の場合には25本束が1箱に5束の計125本入れられます。
輸出用の箱は、BELLA ROSA社専用の箱に加えて、イタリアの輸入販売会社の箱もありました。また、入口ではFresFlor社の保冷トラックをみかけました。
BELLA ROSA社では、BASC(The Business Alliance for Secure Commerce)、FlorEcuadorの認証を受けています。
BASCは麻薬の国際取引防止に関する認証で、まさにエクアドルが直面するコカの栽培とコカインの生産を廃止するための企業倫理を示すものです。
FlorEcuadorは、EXPOFLORES(Association of Flower Producers and Exporters of Ecuador :エクアドル花き生産・輸出協会)が認証している制度で、資源、エネルギーの効率的な使用、殺虫剤や殺菌剤などの化学薬品の汚染防止、安全管理と労働条件の改善等に関する認証を行っています。
この他に、BELLA ROSA社は「Ecuadorian & Green」という独自の認証制度を設立しています。Ecuadorian & Green制度では、品質管理、環境への配慮、従業員の福利厚生を適切に実施することを目的としており、なかでも環境への配慮については天敵の利用に力を注いでいます。BELLA ROSA社はではBiological Control Laboratory(生物管理研究室)を設置しており、Trichoderma、Paecilomyces、Bacilos、Pseudomonasなどの拮抗微生物の活用、有機資材の投与による土壌微生物の活性化、天敵昆虫の利用などの開発を行っています。
ゴミの分別はかなり細かく徹底されていましたが、貯水槽は最も高いところに設置されているだけで、廃液の回収は行われていませんでした。私の見た限りでは養液の循環はされていませんでしたので、いわゆる養液かけ流しの養液土耕栽培で、水質汚染に対する配慮姿勢は高くないと感じました。
ホームページによると、労働者の福利厚生に対する配慮は行き届いているようで、充実した食堂での栄養管理や従業員の子供達への就学支援などに取り組んでいます。また、従業員の休憩所の近くには小さな祠がありました。