★「斗南村(雲南省昆明市)の切花生産」
昆明市斗南村は中国の最大の切花生産地として発展してきています。切花生産は1990年に魯翠華という野菜農家が始めたことがきっかけになり、その後生産農家の数も急激に増加し、現在1万戸以上の花き生産農家と300社以上の生産企業があるといわれ、十数年のうちに急速に発展した産地です。
生産量は年間15億本で、中国全土の60%の切花生産を行っている。生産された切花は、北京、上海、広州など中国国内の十数の大都市に輸送されるほか、日本、台湾、シンガポールにも輸出されています。生産されている主な品目は、カーネーション(康乃馨)、バラ、カスミソウ(満天星)、リモニウム(勿忘我・情人草)、グラジオラス(剣蘭)、ユリ(百合)、ガーベラ(非洲菊)、情人草、カラー(馬蹄蓮)、桔梗、菊花等で、カーネーションが全体の40%を占め、バラが14%、カスミソウとリモニウムが各々10%を占めている。
全ての切花は写真の「斗南花卉交易市場」に集められ、出荷されます。
下の写真のように、ほとんどが竹の支柱を用いたビニルハウスで、左の写真のなかの遥か向こうに霞む山(みえますか?)まで、このビニルハウス群が続いているとのことです。真ん中の写真のビニルハウスの向こうに立ち並んでいる3階建ての家々は切花で儲けた農家の家だそうです。
右の写真のように、ビニルハウスの脇には水路が掘られていて、これが昆明湖からの導水路となっており、これをビニルハウス内の潅水に用いています。当然、手潅水です。
バラ生産は盛んで、苗は全て挿し木苗です。斗南花卉交易市場でも挿し木苗が販売されていましたが、発根は良いもののウドンコ病に汚染されており、余りよい状態とはいえないものでした。
生産しているビニルハウスは高さが2〜2.5m程度で、常時ビニルが掛けっぱなしの状態で、ビニルの裾を開けて換気する程度です。当然のことながら、日中は高温乾燥、夜間は高湿度になるので、出荷されるバラはかなりウドンコ病に汚染されています。高温高湿度の環境で生育したバラは茎が軟弱で、日持ちが良いとはいえない状況でした。とにかく、栽培面積が急速に拡大し、農家の生産規模も零細であることに加えて、当然のことながら電気がないので換気扇やタイマーを使った換気装置などが普及しておらず、品質を高めるのは難しいと感じました。市場の担当責任者もこの点については充分理解しており、「この点を改善しないと日本への輸出は難しい」と述べていました。
栽培品種名について聞いてみたのですが、品種に関する知識が全くなく、「赤バラ」、「黄バラ」との答えが返ってきました。赤バラの主力品種は「紅衣主教(カーディナル)」だそうです。中国国内の種苗法は農家の自家増殖を法的に許可しており、パテント品種であっても挿し木で無断増殖することは中国国内では違法ではありません。当然のことながら日本に輸出すると、その段階でパテント請求の対象にはなりますが・・・。
生産されている切花としてはバラの他に、カーネーション、グラジオラス、ユリ、アスター、リモニウム、アルストロメリアなどを見かけました。
カーネーションの生産と切花調整の風景、および市場出荷形態
グラジオラスとユリ
アスターの切花
リモニウムの苗と切花
少量ですが、アルストロメリアもありました。
「隆格蘭園芸公司」という生産企業を視察しました。左の写真は培養施設で、1階が組織培養接種室、2階が培養室で、右の方に順化温室への渡り廊下が繋がっているのがみえます。カーネーションのウィルスフリー苗も生産しており、昆明だけでなく中国全土に販売しているそうです。残念ながら一切の写真撮影お断りのため、映像を紹介することはできませんでした。