ゆくはし植物園
【園芸店】
(福岡県行橋市)
2011年6月2日の九州日観植物(株)での講演に先立って、ゆくはし植物園を訪問しました。ゆくはし植物園の社長の鐘ヶ江奉一氏は2010年の花葉会セミナーで講演され、それ以来一度伺ってみたいと思っていました。
ゆくはし植物園は国道201号線(福岡市東区〜飯塚市行橋市)から1本入った所にあり、国道沿いには看板もないため、初めて行くのは難しい位置にあります。しかし、訪問したのは6月2日木曜日の午後でしたが、駐車場には50台以上の多くの車が止まっており、思わず土日と錯覚しそうな賑わいでした。来客の地域は自家用車で2時間程度とのことで、間違いなくリピータの来客者が主体となっています。
店内はテーマを決めたコーナーごとに区分されており、見本鉢が至る所に展示されていて、お客さんは自分のお宅で育てた時のイメージを想像しながら店内を散策することが出来ます。
見本鉢や寄せ植えのサンプルは生産農家に委託して特別に生産しています。一般にサントリーフラワーズやPW(プルーブンウィナーズ:Proven Winners)では、販売苗と一緒に見本鉢を園芸店やホームセンターに納入していますが、園芸店が販売促進目的で独自に見本鉢寄せ植えのサンプル生産を委託しているという話は初めて聞きました。
苗を見ているだけでも綺麗で夢をかき立てられますが、見事な見本鉢があると玄関に飾った時の姿を思い浮かべて苗を選ぶことが出来ます。
ゆくはし植物園では、毎週水曜日に九州日観植物から植物を購入していますので、訪問した木曜日は品揃えが最も豊富な時です。しかし、既に販売苗がまばらになってしまっている商品もありました。その商品の奥には見事な見本鉢が飾ってありました。この見本鉢を見たら誰でも苗を買ってみたくなるだろうなぁと思いました。
下の写真は、サントリーフラワーズの「サンパラソル」の見本鉢です。これだけの見本鉢を作るためには半年近くの期間が必要です。サントリーと交渉して、半年前に特別に苗を提供して頂き、生産者に委託して「ゆくはし植物園専用」に製作してもらい、訪問した日に納入されたとのことでした。
見本鉢に寄せる強い想いを垣間見た気がしました。
店内には「わからないことがあれば従業員に一言声をかけてください」の掲示が大きく掲げられており、来店したお客さんが本当に気安く「育て方」などを質問していました。
中央の写真の左の男性は社長の鐘ヶ江奉一氏ですが、苗の選び方、定植後の肥料の与え方、ピンチの方法と時期などを15分以上にわたって判りやすく親切に説明していました。気が付くと、周りの数人のお客さんも集まってきて聞き耳を立てていました。
下の写真はエリカ‘メイ・クイーン・イナ’(Erica 'May Queen Ina')です。3号苗、4.5号ポット、8号ポットと、同じ植物でもサイズを変えて販売することで、色々な消費者ニーズや技術レベルに応じた商品提供を考えていました。
カラーリーフも豊富に取りそろえています。ハルディンの積極的な取り組みもあって、実際にもカラーリーフはよく売れている商品だとは思いますが、カラーリーフ・コーナーを見ていると「カラーリーフは流行っているんだ」という気持ちにさせられます。
写真を見て気付かれた方もおられるかもしれませんが、展示販売してある植物はすべて白色のトレーに入っています。生産者の所では「黒色のトレー」が一般的で、「白色のトレー」は見ることがありません。
ゆくはし植物園では、花き市場から仕入れた植物はすべて黒色のトレーから白色のトレーに入れ替えて店内展示を行っています。店員さんが一鉢ずつ黒いトレーから白いトレーに入れ替えていました。この時に植物の状態をチェックしたり、すき間を空けて並べ替えたりすることが出来ます。
訪問したのは6月でしたので、アジサイとギボウシのシーズンです。本当に多数の品種が展示・販売されていました。これだけの種類が揃っていると、必ず欲しい品種が出てきます。お客さんの気持ちを大切にすることで販売実績を高める努力を感じました。
通常の園芸店では、品揃えを充実させればさせるほど販売ロスが発生しやすいので、なかなか踏み切れません。
吊り鉢が多く展示してありました。これからブームが起きると思われるインテリア植物への積極的な対応が伺われます。
社長の鐘ヶ江奉一氏は「これから観葉植物が必ずブームになる」と言っておられ、観葉植物フェアを企画しているとのことです。
オリジナルのポップが至る所に展示してあります。バラを大鉢に植えた時の半年後の姿や、植物の特長、効能などのウンチクにあたるような情報などが満載でした。
顧客の満足を第一に考えた店作りという信念を感じました。
社長の鐘ヶ江奉一氏から最後に伺ったお話です。
「駐車場の一部をつぶして憩いの場所を作りたいと考えています。2時間かけて車で来店されるお客が多くは必ずと言って良いほどご主人が運転してこられます。奥様は楽しそうに2時間店内を散策されて買い物をしていただいているのに、ご主人は手持ちぶさたで申し訳ない気持ちです。ご主人が満足して2時間お待ちいただくスペースを作りたいと思っています。」